メルヘンチックな作者の名前に、以前から興味はあったが、とうとう読んでみた。
「長い廊下がある家」「雪と金婚式」「天空の眼」「ロジカル・デスゲーム」の短編4つで構成されている。
特徴的なのは、これら全てに推理小説家の有栖川有栖が出てきていること。
有栖川有栖ファンなら当然のことなのかもしれないが、この作家の作品は初めて読んだので、すごく新鮮に感じた。
これ、作者の頭の中はどうなっているんだろう?ただ単に、自分と同姓同名、かつ職業も同じ人間を描いているだけなのか、それとも自分そのものを投影しているのか…
そして、重要な登場人物がもう一人。臨床犯罪学者の火村准教授だ。ほぼ彼が探偵役として警察から現場に呼ばれ、有栖川有栖も(ついでのような感じで)一緒に呼ばれる。
役柄としては、火村がホームズ、有栖川がワトソンだろう。有栖川が関西弁を話すので、東川篤哉の某シリーズのようにも感じる。犯罪現場に呼ばれる、という設定は、東野圭吾っぽくもある。
有栖川が次々出す仮説を火村が否定し、そしていつのまにか火村が答えを導き出している。二人のやりとりがおもしろい。私が関西出身のため、関西弁も違和感なく入り、テンポよく読み進められた。
個人的には、タイトルにもなっている、「長い廊下がある家」と、最後の「ロジカル・デスゲーム」がお気に入りだ。
「長い廊下がある家」は、まず舞台となる家が特殊だ。その特殊さを使ったトリック。
山奥の人がいない村、心霊番組の取材、黒く冷え冷えする廊下、今が夏だからか、雰囲気満載で読めた。
「ロジカル・デスゲーム」は、読み進めていくうちに、それあり?と思うようなシチュエーションだが、最後の確立の問題、そういうことか…となった。なんか洋画でありそうな、ちょっとぶっ飛んでる感じだが。
そういう作風なのかもしれないが、トリックだけ解明して、あとの人間関係については言及されないタイプの作品だった。事件後の登場人物たちがどうなったのか少し消化不良だが、そこまで書くのは野暮だ、ということなのだろうか。
全体的に軽い気持ちでサクッと読める。このシリーズの他の作品も読んでみたい。